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Peter Pan Crime 16




 東都の外れにある、ごく普通の一軒家。数あるキッドの隠れ家のひとつであるその中で愛銃の手入れをしていた快斗は、ふと周りを見渡した。
 そこは物で溢れていた。地球儀に鳥篭、飛行機の模型。なんのためにあるのか、クラシックカーまで。
 もともとは黒羽家の隠し部屋にあったものだが、時間をかけて少しずつそこにあったものをここへ動かしたのだ。キッドとして疑われ殺された盗一の家であり、そして二代目キッドである快斗の自宅に、この膨大な証拠物件を置いておくのは危険だと判断したからだった。
 その中に、積み上げられた紙束がある。最近の雑誌から、古い新聞記事まで。すべてキッドに関わるものだ。
 快斗の部屋に置いてなかったそれらは、すべてここに置かれていたのだ。道理でいくら探しても見つからないはずである。
 ここは快斗と寺井、そして――千影しか知らない場所だった。

「相変わらず汚い部屋ねえ」

 彼女に言わせれば「ガラクタ」に囲まれて座りこんでいる息子を見て、千影は呆れた声をあげた。

「あんたもあの人に似て、ほんと片付けが下手よね」
「うるせー。いいんだよ、どこに何があるかはちゃんと分かってるんだから」

 なにをしにきたのか、快斗は彼女――元怪盗ファントム・レディである千影を胡乱げに見遣った。
 そう、元怪盗だ。彼女はもちろん、二代目キッドの正体が自分の息子であることを知っていた。ついでに言えば、寺井と新一が共謀して偽物のキッドを演じていたことも知っていた。知っていて、なにも言わなかったのだ。
 彼女が悪いわけではないが、知っていたなら教えてくれてもよかったのにと、思わずにはいられない快斗である。

 すると、ちょうどいいタイミングで、快斗の携帯が鳴った。特別に設定した着信音に、快斗は慌てて電話に出た。

「――もしもし!」
『……よぉ』

 ぶっきら棒な、けれどそれさえ可愛く聞こえてしまう大好きな人からの電話に、快斗の顔は綻んだ。

「どうした?」
『ん……一応、な。言っとこうと思って』
「うん?」

 歯切れの悪い新一を急かすことなく、快斗は彼の言葉を待った。
 新一は言いづらそうに躊躇っていたかと思うと、

『一応……今度の土日は空けとく、から』

 それだけ言うと、ぶつりと通話を切られてしまった。
 ――今度の土日。その日は十二月の二十四日と二十五日。つまり、クリスマスだ。その日を快斗のために空けておいてくれると言う。
 快斗の顔は、最早見る影もなく緩んでいた。

「高嶺の花を前に二の足踏んでたあんたも、ようやく覚悟を決めたってわけね」

 千影の声で我に帰り、快斗は慌てて彼女を振り返った。新一からの電話に慌てて出てしまったが、彼女にはまだなにも言っていない。新一が好きだということも――新一と付き合っていることも。

「あの、母さん。実は俺、」
「男同士だとか、細かいことは言わないわ。工藤君みたいな優しくて良い子、そういないんだから。大事にしなさい」

 泣かせたら承知しないわよ、と言って片目を瞑る母に、快斗は瞠目した。

「か、母さん……? なんで工藤のこと知って…」

 狼狽える息子に、千影は少女のようにふふっと笑うと。

「――母はなんでもお見通しなのよ!」



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