隠恋慕
手から伝わる温もり
誰かが言ってたんだ。
誰かの温もりがなければすぐに冷えてしまう、それはまるで心のようだと。
「…おまえ、手ぇ繋ぐの好きだよな」
警視庁からの帰り道。
事件明けの新一を迎えに来た快斗は、当然のように新一と手を繋いでいる。
それを少しも嫌だと感じない自分にどーよと思いつつも、暖かいその手を離そうなんて気は少しも起きない新一だけれど。
すると快斗は、見てる方が恥ずかしくなるような笑顔で言った。
「これはね、新一の心を温めてるんだよ」
「へ?」
小首を傾げる新一の手に快斗が優しく口付ける。
「手は心なんだよ。人と人が初めて触れ合うのは手だろ?そうやって、他人の心と触れ合うんだよ」
たとえば握手が友好の証であるように、握手も交わせない人とは決して心も通じないのだ。
言われてみればそうだと、新一は納得した。
「それに、手ってすぐに冷えちゃうだろ?しかも、一度冷えるとなかなか温まんないし」
「そうか?擦り合わせたりポケットに突っ込んどきゃ温まるぞ」
「んー…確かにそれでも温まるけどさ」
快斗が急に立ち止まる。
自然、手を繋いでいた新一も立ち止まる。
すると、徐に新一の手を両手でそっと包み込み、まるで命を吹き込むように、はあ、と暖かい息を吹きかけた。
くすぐったさと気恥ずかしさで、新一は顔が熱くなるのを感じた。
「こうやって誰かに温めてもらった方が、ずっと温まらない?」
トクトクと早まる鼓動に気付いているのか、快斗は悪戯な笑みで見上げてくる。
…なんだか悔しい。
確かに、温められてしまった。
手どころか顔も身体も、――心ごと。
見事に温まってしまった。
「心って、自分ひとりじゃなかなか温められないだろ。それと同じで、手も、自分ひとりで温めるより誰かに温めてもらった方が、ずっとずっと温まるんだ」
だから俺は、こうしていつも新一の心を温めてるんだよ。
そう言って笑う快斗に、新一も笑いながら「サンキュ」と返した。
――本当は。
キミが、俺を温めてくれているんだ。
俺が、キミに温めてもらっているんだ。
俺の心を温められるのは、キミの手から伝わるその温もりだけなのだから。
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